1. ホーム
  2. セブ島通信

私のマーヨンなご近所[セブ島通信7月号]

私のマーヨンなご近所[セブ島通信7月号]

私の住んでいるマクタン島は、ECQからGCQへと規制が緩和されたが、感染者は相変わらず毎日報告されており、収束の兆しさえ見えないような気がしているのは私だけではないはず。そんな中、我が家の目の前のペンションハウスでクラスターが発生した。ペンションハウスには近くのコールセンターで働く人たちが一時的に住んでいた。

ECQが始まってすぐに近所で感染者が報告された時には、軍やらバランガイやらの人たちが24時間体制で見張っていたが、現在、このペンションハウスには閉鎖されておらず、見張りもいつもはいない。何となくわかってはいたけれど、自衛するしかないのだと思い知らされる。規制が緩和され、ようやく営業を再開した叔母さんのバーベキュー屋も、何しろ道路を挟んだ目の前の建物でクラスターが発生したということで、行政の要請なのか自主的なのかはわからないけど、シャッターを開ける気はないようで、私もまた一日三食を作らなくてはならなくなった。

世間ではコロナ太りなどという言葉も聞かれるが、我が家に関しては、みんな健康的に痩せた。町中ではデリバリーやテイクアウトなどもあったそうだが、アプリを開くと私の住むところではマクドナルドかジョリビーかジョリスのみ。先行きが見えない中では、出費も控えめにせねばとの思いから配給される米と濃いめに味付けをしたおかず一品という、この辺では当たり前の食生活をしていたら自然と体重が落ちていった。

配給されておいて文句を言うわけではないけれど、この米は炊くとものすごく増えた。自分で買っていた米だって決して高級ではなかったが、ここまで増えなかった。最初はお得感を感じたが、食べても食べてもすぐに腹が減る。水で増量しているだけなのだから、考えてみれば当たり前の話だが、これでは食間に何かを食べなくてはもたない。と、気がつく。一般的なフィリピン人がおやつを欠かさないのはこういうわけだったのか。

しかし我が家では買い物でも外出できるのは私一人だ。スーパーマーケットは配布されている通行証の末尾番号で規制されていて二日おきにしか入店できないし、そもそも庶民の足であるモルティカブもないので、バイクで買い物に行かなくてはならないのに、お菓子まで買い込むと荷物が大量になりバランスを崩し危ない。というわけで、三食腹いっぱい食べているにも関わらず3キロを難なく落とした。そして気がつく。ここ数年、何をやっても減量できなかったのは年齢のせいだと思いこんでいたが、原因はお菓子だったことを。

しかしここへきて、順調に体重が元に戻り始めている。というのも、デリバリービジネスが私の住むあたりにもようやく広がってきたからだ。フェイスブックには、いろんなものを作って売り出す人が急増している。私と友達になっている近所の人たちもアイスクリーム、キムチ、トッポギ、ビビンバ、パスタ、マンゴーフロートなどを売り出したので、試しに買ってみた。値段的にはお手頃だけど、正直なところ味に関してはまったく期待はしていなかった。

しかしこのあたりは、いわゆるビーチリゾートと呼ばれるエリアのため、ホテルやレストランの調理人などが多い。そんな人たちがとりあえずの収入を求めて副業しているらしく、ちゃんとしたものが届くので、ちょこちょこ購入している。

GCQに移行する少し前からは、早朝と夕方には魚を売りに来ていたし、近所の人たちもそろそろ経済活動をしないとまずいと思ったようで、独自にいろいろなものを仕入れ、訪問販売をしてくれる。フルーツや魚介類、精肉などであったが、こんな時期だから値段を釣り上げるでもなくむしろいつもより安いくらいの値段で売り出していたのでこれまたよく利用した。

ある日の昼前に、隣の叔母さんがアドボを持ってきてくれたので有り難くいただき、そのまま昼食にした。ガブリとかぶりついたが、ものすごく硬い。まさに歯が立たないくらいの硬さだった。見た目は鶏肉のようであったが、息子たちが言うにはこれはアヒルの肉だそうだ。

以前、闘鶏で負けた鶏の肉を食べたことがありそれもものすごく硬かったが、アヒルはそれにも増して固く、ほとんど食べるところもなかったが、アドボの煮汁で何とかご飯を食べた。数日後、今度は鶏の足のスープが届いた。これはコラーゲンたっぷりでなかなか美味しかった。こんな状況であったが、5月の祭りでは飼っていた豚を2頭潰していて、レチョンなどご相伴にあずかった。

この叔母さんの家は、以前にもネタにしたがたくさんの動物を飼っている。この辺の人たちは銀行口座を持つ代わりにこういった家畜を飼う、と聞いたことがあった。いざというときに売ったり、食べたりできるからとのことであったが、こういう状況になり改めて先人の知恵には意味があると思った。

今もアヒルの集団は我が家の番犬が飲む水で水浴びをしたり、テラスで排泄をしたりとやりたい放題で迷惑を被っているが、いざとなれば腹を満たしてくれる存在と思えば許せるというものだ。