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私のマーヨンなご近所 [セブ島通信5月号]

私のマーヨンなご近所 [セブ島通信5月号]

新型コロナのせいで世界中がえらいことになっている。少し前までは、たちの悪い風邪くらいの扱いであったような気がするが、マニラでいきなりロックダウンになってからは、あれよあれよという間にここセブでも外出禁止となってしまった。

大騒ぎする近所の親戚連中を鼻で笑っていた私であるが、すっかり隔離前の準備に乗り遅れてしまった。アリとキリギリスならば絶対にキリギリスだと思っていた近所の親戚たちは実はアリのように「厳格な隔離」前に米を何サックも買い占めていた。

私の住んでいるところは、いわゆるリゾートエリアで、ついこの間までその辺に海外からの観光客がたくさんいたのである。コロナ感染者がいたとしても不思議ではないとは思ったが、そもそもこの辺の人がコロナを疑い検査をするのかはあやしいと思っていた。以前、ウチの息子がデング熱で入院したことがあったが、退院して近所の人に言われたのは、「金があるから入院して病名もわかるけど、うちみたいな貧乏な家じゃ薬草飲んで寝ているしかない。」だった。なので、おそらく実際にはもっとたくさんの感染者がいるのだと密かに思っている。

「厳格な隔離」が始まっても、あまり不便は感じていない。隔離前には買い物などの外出ができる通行パスもバランガイから届けられたので米を買い占めていた親戚に分けてください、と泣きつかなくてもよかった。

道路から入ったところでは、バレーボールをしたり、手作りの凧を上げていたりと結構ゆるかった。

我が家の息子たちも、結構な金をかけて設置したがまったく使っていなかった裏門を使って、奥の部落の行き来をし、「開かずの扉」がようやく日の目を見た。

ところが、「厳格な隔離」が始まって数日後、近所の人がコロナに感染していることが判明した。その人が住んでいた家の周り一体の立ち入り禁止が始まった。チェックポイントみたいなテントが張られ、バランガイや軍の制服を着た人が24時間見張っているので、家で大人しくしているほかはなくなった。

しかしよくよく話を聞くと、コロナに感染したのは、もともと何らかの病気でどこかの病院に入院していた人だというのだ。今回、隔離されたのは、感染した人の身の回りの世話をしていたメイドとその家族だった。

このメイド一家は一切の外出を禁じられ、食料などはバランガイから届けられるとのこと。仕事もなくなり収入の道を絶たれている人がほとんどのこの辺りで、そっちのがいいじゃん、と不謹慎なことを思わざるを得ない。

バランガイからの配給はあるにはある。しかし私が受け取ったのは、米5キロが3回。SNSなどでほかの地域の情報を見ているが、缶詰もなければインスタントラーメンもない。いや、もしかしたらうちに来る前にどこぞの家に流れているのかもしれないが。

年寄りのいる家庭には現金が支給されるというので、大喜びで申込みにいった姑は、お前は大きな家に住んでいるから対象外だ、と言われプリプリ怒っていた。

米だけでどうやって生きていけというのだろう、と途方に暮れていたら、息子の友達が、ギナモスというしらすのような小魚の塩漬けを買わないかと言ってきた。ラム酒が入っていたであろう小瓶に詰められたギナモス、90ペソだったが、届けてくれたので、100ペソでお釣りはいらないと言ったら大喜びで帰っていった。

このギナモス、めちゃめちゃしょっぱくて塩辛のような味がする。ほんの少しでご飯をもりもり食べられるので、もっぱらこれをおかずに腹を満たす。

セブの方ではデリバリーが充実しているようだが、この辺りではマックとジョリビーくらいしかないので、三食自炊するしかない。スーパーに買い出しに行ったが、タイミングが悪かったのか野菜や卵などは売り切れであった。

仕方がないのでバイクで市場へ行ってみたら、スーパーでは見たことがないような新鮮な魚や野菜などが売られていて嬉しくなった。以前はこういうところでしか買い物できなかったが、近所にスーパーができてからは、足が遠のいていた。

買い出しをして家に戻ってきて、片付けていたら、卵が一個足りない。6個買ったはずなのに5個しか入っていない。しかも1個は割れかかっている。そういえばこういう市場ではいちいち値段を確認し、自ら選んで袋に入れないとこういうことになるということをすっかり忘れていた。

セブでも治安が悪化しているそうで、外国人は特に目立つので犯罪に巻き込まれやすいとう。私も気をつけなくちゃ、と言ったら、二人の息子が「お母さんは大丈夫だよ。」と口を揃えて言った。

確かに自分でいうのも何だけど、市場へ行き買い物をしたところで、私が日本人であることを気づいた人はいない。しかしぼーっとしているオバちゃんとして卵1個、8ペソ50センタボスをごまかされてしまった。(割れかかっていた卵は意地でハンバーグに入れしっかり火を通し食べた。)

用がなければ外には出ていないが、1日に一回、夕方に犬の散歩をする。といっても門を出た国道沿いを数メートル行き来するだけなのだが、マスクをして通行パスを首からぶら下げての完全武装だ。先日、いつものように道路脇にいたら、消毒をしているトラックが通り過ぎ、頭から消毒液をかけられてしまった。乱暴だけどやるべきことはやっていると、今回のことでフィリピンを見直すことが多い。