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コロナ渦中の補習校 [セブ島通信5月号]

コロナ渦中の補習校 [セブ島通信5月号]

セブ日本人会推薦理事 蝶谷 正明

1983年の創立以来、私たちの補習校は前代未聞の窮地に陥っています。

この記事を書いているのは4月16日です。3月14日から補習校は授業休止になっています。既に1ヶ月が経過し、再開の見込みは立っていません。現状ECQは4月末まで延長されていますが、再延長を否定出来る状況にはありません。まったく光の見えない闇夜を手探りでウロウロしているような不安と恐怖にとらわれている日々です。1月5日、恒例の新年会で生徒たちは餅つきや正月遊びに興じ、書初めで手を真っ黒にしました。例年と変わらぬ補習校の日常でした。

コロナなど中国や日本でのクルーズ船の話、遥かな対岸の出来事に過ぎませんでした。2月中旬になって商工会からのご提案で登校時に検温し消毒用アルコールを備えるようになりました。それが3月に入るとマニラのECQ発令、セブ発着の国内外線のフライト、船便の減便から中止に進み、セブが外界から閉ざされ、ECQ発令が時間の問題となる情勢へと一気に加速しました。「あれよあれよという間」というフレーズが否応なしに我が身に迫り、呑み込まれるような毎日でした。この状況に鑑み、補習校運営委員会は緊急のオンライン会議を招集し14日からの休校措置という苦渋の決定を下しました。

当初は3月末、その後4月中旬そして無期限へと延長せざるを得ないのが4月16日時点での状況です。小学校1名、中学校3名を送り出す3月28日の卒業式と新入生7名を迎える4月4日の入学式は断念せざるを得ません。卒業証書をひとりひとりの手に渡すことの出来る日がいつになるのかは予想出来ません。この緊急事態に応じて帰国を選択したご家庭も少なくありません。現在42名の生徒が在籍する補習校です。セブに残る者、緊急避難先として日本に帰る者、小さなセブの補習校がバラバラになる瞬間です。

しかし、10年余りこの小さな教育を媒体とした生徒、保護者、講師、ボランティア、運営委員にるコミュニティーに携わってきた身としてはまず第一に優先しなければならないのは各自の健康、端的に言えば生命です。勉強は取り返せます。追いつくことが出来ます。また、各家庭に於いて親御さんだから与えられる教育があります。一時帰国した子供たちには日本のコミュニティーだからこそ得られる教育があります。漢字や英単語を覚え、計算に秀でることだけが教育ではありません。現状では限定されるとはいえ異なるバックグラウンドや年齢の人々に接することは九九や公式を覚えるより遥かに重要です。

ポジティブ、ネガティヴともに日本でセブとの違いを実体験することも得難い教育です。子供たちが自分の目で耳で肌で感じ、悩み、判断する、そんな教育のチャンスが与えられているのかもしれません。そして、いつになるかは分かりませんが、子供たちが補習校で講師や友だちと再会し大声で自分の経験を語り合える日が来ることを