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私のマーヨンなご近所 [セブ島通信9月号]

私のマーヨンなご近所 [セブ島通信9月号]

マスクとフェイスシールドの生活がもはや日常となった。フェイスシールドはとりあえず商業施設の入り口ではしているが、中に入れば頭の上に乗っけておいても誰にも咎められないので、果たして意味があるのかと思わなくはないがお上の決めたことには黙って従う私は善良な外国人である。

しかし、私の住むラプラプ市の市長が、ワクチンを接種していない人はスーパーやコンビニ、市場までも出入りができなくなるということを言いだした。

実は四月頃に、バランガイの保健所に勤める知人からワクチンを打たないかと誘われていた。てっきり借金の申し込みかと思って電話には出なかったのだが、あまりにしつこくかけてくるので出てみたら「ワクチン打たない?」と言われたのだ。

しかしこの時は丁重にお断りした。できればシノバックではないものを接種したかったし、この人に借りを作って後で高くつくのも恐ろしかったから。

しかし近所でもちらほらとワクチン接種を済ませた人が出てきたのでこの際、打っておくかと、まずはネットで登録をしようと調べたが登録サイトが出てこない。ようやく登録サイトの載っている新聞記事を見つけたが、サイトはエラーで開かない。

しばらくして市長のフェイスブックから登録サイトを見つけ登録を済ませた。あなたの順番になったらテキストで知らせます、という案内はあったが、その後、何の連絡もない。すでに一か月以上経っていた。相変わらず、市長はワクチン接種を強く推奨してくるが、申し込んだのに何の連絡もないのはどうすればいいのだろうか。

そんな時、フォローアップサイトがあるのに気づき再度登録した数日後にワクチン接種していない人は商業施設に入れないというニュースが飛び込んできたのだ。

さすがにこれはないだろうと思った。しかしここはフィリピン。今まで私の想定をはるかに超えてきたことをいきなり決定事項として知らせてきたではないか。スーパーだけならまだしも、公設市場とわざわざ書かれているということはワクチンを打ってないと買い物がまったくできないということで途方に暮れるしかなかった。

しかし、翌朝、スマホを見ると、ワクチンスケジュールの知らせが届いていた。え?今日の午後?まったく急な話で、お上は庶民の都合なんてことは考えてくれないようだ。とはいえ、これは何が何でも打ちに行くしかない。もはやコロナ対策というより買い物をするためだ。

仕事を早退し、指定された接種会場に行ったがすごい人だった。とりあえず長い列に並んでいる人の後ろについたが、これで本当に今日、打てるのだろうか?と不安しかなかった。が、テキストをもらっている人は別の受付があり、すんなりと入れてもらえた。

いきなり来ても打てない、と案内されていたが、登録もせずに並んでいる人が山ほどいたというわけだ。

それでも2時間ほど待ち、ようやく接種してもらった。シノバックだった。みんな何がそんなに楽しいのか知らないけど、並んでいる時も自撮りを撮りまくっていたし、実際、接種するところは、ほとんどの人が自撮りをしていた。更に出口には、撮影所もあり、わざわざポーズを決めて写真を撮る人も少なくなく、その写真はそれぞれのフェイスブックに載せられるのであろう。

副反応といえば腕が予想以上に痛くなったが、翌朝にはすっかり治っていた。そして2回目の接種日。接種前の血圧測定で引っかかってしまった。今まで血圧が高いなんてことは言われたことがなかったので、何かのまちがいでは、と食い下がったが、頑として譲らず、30分静かに座っていろと指示をされた。

そして再度計測したが相変わらず高いとのこと。医者のところにいき薬を飲まされ、また30分。

しかし血圧は下がらず今日は打てない、と言われてしまった。日を改めよと言われたので、すごすごと帰る途中、どうにも納得がいかないので、薬局に寄り、血圧計を購入し、家で何度か測ってみたが正常値だった。

そして2日後、再度、挑戦すべく接種会場に行った。夕方だったので、待っている人はいなかった。早速、血圧を測ると驚くことに上が200を超えているという。また出直しではたまらない、と、家では正常値だと言ってみた。

すると、この前は頑なに許可をしなかった医者がすんなり許可をしてくれ無事に接種することができた。もうすぐ終了時間らしく、会場のスタッフはみんな帰り支度をしており、接種後の血圧も測るには測ってもらったが、また160くらいあったにもかかわらず何も言われず、ここで5分座ってから帰れと、一人ポツンと取り残された。

みんな早く帰りたかったから私の血圧なんてどうでもよかったようだ。

こうして何とか無事に2回の接種を終えた。ワクチンを打ってない人はスーパーに入れないというのは早々に撤回されていたが、お陰で一般市民の接種率はかなり上がったのだろう。

これで少しは感染者も少なくなってくれるといいのだが、マニラの市長の例もあるのでしばらくは感染対策を怠らずにしておこう。

さて、せっかく血圧計を買ったのだから、とあれから毎日測っているがいたって正常値である。そのことを隣の叔母さんに話をした。すると近所では、私は注射が怖くて血圧が上がった人ということになっていた。